日時: 平成27年1月6日 15時30分-17時30分
場所: 情報科学研究科 5階 コラボレーションルーム7
講演者氏名: 林 紘一郎
情報セキュリティ大学院大学 教授
講演題目: サイバーセキュリティと通信の秘密
「通信の秘密」は、私たちの基本的な人権の1つであるプライバシーを、通信の
プロセスにおいて保護する規定である。中世に誕生した郵便サービスでは、検閲
が日常の如く行われていたので、人々は安心して郵便を使うことができなかっ
た。フランス革命の達成目標の1つが「検閲の禁止」であったことは、「通信の
秘密」が基本的人権にとって、いかに大切かを示している。
第2次大戦後に制定されたわが国憲法において、「通信の秘密」は当然保障され
ている(21条2項後段)。しかもわが国は、おそらく世界で最も厳格に、この規
定を運用しているものと思われる。それ自体は誇るべきことだが、保護に安住し
て、それ以上の議論が行われていないのは、「戦争の放棄」を謳った憲法9条に
関する議論と同様である。
実は、「検閲の禁止」(憲法21条2項前段)は絶対的なものだが、「通信の秘
密」は、それを上回る法益(法的に保護されるべき利益)がある場合には、例外
的・時限的に制約される場合がある、というのが国際常識である。この例外に属
するものとして、犯罪捜査のためや、インテリジェンス活動のための通信の傍受
がある。またオンラインの傍受ではないが、通信履歴(いわゆるログ)をどう扱
うかという問題もある。
本講演では、これまで「絶対視」されてきた「通信の秘密」を相対化し、サイ
バーセキュリティ対策という面から再構築するにはどうすればよいかについて、
私見を披露する。
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