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    ”エージェント技術を利用した匿名通信に関する研究”


     本論文では,ユーザのプライバシ保護手法の1つである匿名通信を研究対象と し,次世代コンピューティング形態として期待されている エージェント技術の観点から匿名通信に関する問題点とその解決策 について深く掘り下げて議論を行う. 匿名通信プロトコルとは,ある通信メッセージのイニシエータ(発信者)や レスポンダ(宛先ユーザ)を通信を行う当事者以外の第3者に対して隠して通 信を行うためのプロトコルである.

     まず,本論文では, 閉路には始点と終点が存在しないという特徴に着目し, それを利用して始点(イニシエータ)と終点(レスポンダ) の特定を困難にした新しい匿名通信プロトコルを提案する. 提案方式では,イニシエータとレスポンダの匿名性を実現するために 閉路の特徴を用いたことにより,通信路情報を多重に暗号化 しなくてもメッセージのイニシエータとレスポンダを匿名にでき, さらに,特別なネットワークアーキテクチャにも依存しないため, 既存の様々なシステムに適用可能である.

     加えて,提案方式の匿名性に関しては, プロトコル中のエンティティにイニシエータおよびレスポンダに関して どのような情報が漏洩するのかについても考察し, 経路上の結託者の攻撃に対する匿名性は, 代表的な匿名通信プロトコルの1つであるCrowds方式よりも高いことを示す.

     次に,匿名通信プロトコルの構造を明確化するための 匿名通信プロトコルモデルを提案する. 提案モデルでは,イニシエータとレスポンダの間に介在する メッセージ中継エージェントを用いて匿名通信プロトコルをモデル化する. そのようなエージェントの振舞は, いくつかの簡単な基本関数によって表現可能である. すなわち,基本関数とは匿名通信プロトコルの根幹をなすものであり, 各匿名通信プロトコルはそれに用いられる基本関数によって特徴づけされる. 提案モデルでは既存の匿名通信プロトコルをモデル化するために必要な 基本関数の組を定義する.これにより,各匿名通信プロトコルで匿名性を 実現している複雑な構造を簡潔に表現可能となり, 先に述べた問題点が解決可能となる.

     また, 提案モデルの記述力を示すため, 提案モデルを用いて,既存の匿名通信プロトコルの比較,分類, および,匿名通信プロトコルであるCrowds方式と井上-松本方式の統合を行う. 両方式は,メッセージ中継者にかける負担の種類がそれぞれ異なるため, 実際の環境によってそれぞれの方式を適応させなければならない. このような背景から,想定する環境が異なる方式を統合することにより, 状況に応じた匿名通信プロトコルを容易に選択可能となる. 我々の統合方式を用いると,パラメータの変更などにより 実際のネットワーク環境に応じた匿名通信を実現可能である.



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