ワイヤレスセンサネットワークにおける鍵管理に関する研究
近年, ユビキタスネットワークを代表するネットワークシステムの一つとしてワイヤレスセンサ ネットワーク(WSN)が注目されている. WSN はシステムを管理するサーバと, 低コストな多数の ワイヤレスセンサで構成される. 使用用途は, 農場での気象データ収集や, 運転の支援, 自宅や 公共の場における警備など多岐にわたる. センサノードはごく限られた電源容量と演算性能しか 持たないため, 公開鍵暗号技術等の高度なセキュリティ技術をそのまま利用することができない. そのため, 一般にWSNシステムでは, 共通鍵が用いられることが多い. さらに, セキュリティを 向上させるためにサーバと同期をとりながら, 共通鍵を定期的に更新することが重要である. しかし, 鍵更新時に電波圏外や故障で鍵の更新ができない場合など, 鍵の更新ができずに通信に 参加できないセンサが発生する問題がある. これらの問題を解決するため, Self-healing と呼ば れる鍵の自己回復機能を付加することでシステムの頑強性を向上させる手法が提案されている. Self-healingはセンサ自身がサーバからの鍵更新メッセージから過去の鍵を復元できるという特徴 を持ち, センサの鍵更新が適切に行われなかった場合に有効に働く. また,センサが鍵を更新する 際に,現在の鍵から未来の鍵を作ることができない(Backward Secrecy) も考慮する必要がある. 本研究では低CPUであるユビキタス機器において, Backward Secrecyや結託攻撃に強いという セキュリティ要求を満たし, 尚かつ, ストレージ及び通信のオーバーヘッドが少ない鍵更新の方式 を提案する.